その行動、正義なりや [経営]

今年は例年になく穏やかな天気に恵まれたお正月からの幕開けでしたね。
昨年はアベノミクス効果で、株価は1年で50%以上上昇し、円は20%以上安くなりました。通常ならば貿易収支は黒字になるはずなのですが、ほぼ通年に渡って赤字のままに推移し、特に後半では、エネルギー価格や食料品等が高騰し、政府曰く物価指数が上昇しデフレ脱却のシナリオができたと言うことですが、一般消費者にとっては生活しにくくなっただけではないでしょうか。
「一年の計は元旦にあり」どんな一年になるのでしょう、いえ、どんな一年にしたいのでしょうか。今年は「甲午(きのえうま)」、「甲」は十干の一番目であり殻を破って出ようとする情熱を表わし、十二支の「午」も動的意味を持っていて、そこから「甲午」は激動の年になるといわれています。四月には消費税が上がり、経費や仕入れ価格も上がれば、売値も上げざるを得なくなり、そうなると昨年と同じだけの量を生産・販売しても、売上は必然的に上昇します。その反面、注意しなければならないのは粗利率が低下し、売上が上がっても粗利の額その絶対量が低下する危険性が高まることです。
 その危険性を回避する方法は、時代のせいにせず、自ら率先してまず動き、そして考え、又動く、この繰り返しをどれだけ多くできるかにかかっています。それは、激動であろうが平穏であろうが時代を超えて、中小企業の経営者には求められる資質です。「そんな資質、持ってないよ」と言う人、持ってなければ造る努力をすればよいだけです。何でもいい、小さくていい、継続してまず一つの事をやってみる、何をやるかまず決める、それが「一年の計は元旦にあり」である。
動けば壁にもぶつかり、動かなければ壁があることすらわからない。壁は時代であり、自ら今まで持っていた器である。動けば岐路に迷い、動かなければ道は見えない。岐路が多いのは、情報量の多さ故であり、深く考えている所以である。人生、壁にぶつかり、岐路に惑う、それが人間力を育ててゆくのである。私自身、岐路に立ち、迷った時、少し立ち止まり「それを行うのは正しいか正しくないか」と考えるのではなく、「それを行うのは正義なりや」と考えるようにしている。広辞苑によると「正義」とは「社会全体の幸福を保障する秩序を実現し維持すること」であり、又、「義」とは「利害を捨てて、条理に従い、人道・公共のために尽くすこと」と書かれている。「正しい」よりもう一歩踏み込んでいるのが「正義」と自分なりに定義して考えている。企業として激動の一年になろうと「正義なりや」を常に胸に刻んで、今年も進むと年頭に思う。

今、船長のなすべきことは・・・ [経営]

大手家電メーカーの中間決算が発表され,各社共大幅赤字から一転して黒字予測と大改善しました。しかし、その内容は人員整理、赤字部門閉鎖、関連会社売却といったマイナスを切る事と、円安と言う外部要因によるところが多大であったようです。次の一手が描けない中でとりあえずの緊急の止血処理だけを施した感があります。
安倍政権は10月1日、来年4月の消費税3%アップの8%を表明した後、第三の矢を放つために弓をキリリと引き絞り、凍結されていた公共事業復活、大企業の希望を入れた法人税減税を伴った矢を放とうとしています。この消費税のアップは、福祉目的税とされていますが、福祉を充実させるのではなく、このまま行くと破綻する福祉財源を補填するもので、これも言い換えると止血処理です。消費者物価指数が上昇に転じたことも、デフレ脱却の端緒とみられ、消費税アップの要因の一つとされています。しかし、実態は円安と異常気象で、食料品を含む日常品の値段が高騰しているだけです。あふれた資金が設備投資や賃金に回らず、この状態で消費税が上がると、大企業、大金持ちが優遇され、一般庶民、中小企業にとって厳しいものがあるような気がします。全企業が納得していた「復興特別税」は1年前倒しで中止にする一方で、首相自らがトルコに再度出向き原発をトップセールスする、「おもてなし」の真の心はどこへいったのか怒りさえ覚えます。
いつの時代も事業をやっていく単年度の中にも山や谷があります。特に谷はある時には外部要因も重なって深くえぐれるときもあります。山は低く、谷は深く感じるものです。
1年と言う永い航海の途中には、好天の日ばかりではなく、緊急の対策を講じなければならないときもあります。大きなうねりに飲み込まれて航路を外れそうになる時もあるでしょう。しかし、まさにその時「今、船長のなすべきことは、眼前の荒波を乗り越えることと、たどり着くべき港を見つめること」です。乗り越えてから見つめるのではなく、見つめながら乗り越えるのです。売上が急減した時、「新規開拓をもっとやれ」とハッパをかけるでしょう。しかし、たどり着くべき港を見つめてハッパをかける時は「これから、○○の業種、△△に関連するお客様を獲得することに全力をかけよ」とより具体的になるのです。
たどり着くべき港を見つめながら眼前の荒波を乗り越える努力をすることは、日常的な船長の大きな役割ですが、目的の港に着いたら、次の航海に向かっての準備をし、次の港を決めて再び帆をあげて荒海に出航しなければなりません。そう考えると、船長の最も大きな使命は、港にたどり着くことではなく、それはあくまで通過点の目標であり、真の目的は乗っている船そのものを、そして何より乗員、乗客、積荷の安全・安心を確保しつつ航海を続けることなのかもしれませんね。

芯と勘 [経営]

8月の月例経済報告で、「景気は、着実に持ち直しており、自律的回復に向けた動きもみられる。」と発表された。しかし、国内で多数を占める中小企業にとっては「アベノミクス」「日銀効果」が実感できないと言う声が多く聴かれる。「いつになったら忙しくなるんかね」「もうしばらく辛抱すると自分の所へも仕事が回ってくるかね」と時々聞かれることがある。その時はこう答えます。「いつまで待っても 以前のように大手が忙しくなって、その後我々中小企業に仕事が回ってくるということはないですよ」と。ピラミッド構造をしていた一昔前の製造業では、上から下へ仕事が回ってきたものであるが、その構造自体が消滅してしまった以上、今その期待は薄いと言わざるを得ない。大型予算が組まれたアベノミクスは、上の方で水平に動いているのです。
あるコンサルタント会社の社長さんに個人的に「世間はどうですか、どの業界が忙しくなるのですかね」とお聞きしたところ、「いつの時代もどんなに忙しい業界でも暇な会社はあり、どんな景気の悪い時代でも、業績を伸ばす企業はあるものです。」と言われました。景気のいい業界にいるかどうか、今国内景気がいいか悪いかを一喜一憂している暇があれば、お客様のところに行き、色々な人たちと出会える場に行き、話を聞き、自らの考えを振り返り深めることに時間を費やすほうが数倍ましなのです。
又、ある日、昔 林業に携わっていたお爺さんと立ち話をしてお聞きしたことです。「戦後植えた木を切る時、もう少し太くなったら縦柱が4本とれると欲の皮突っ張らしてできた柱は、将来必ずひずみが出るのじゃ。それはな、芯をはずして使っているからなのじゃ。大きくすることだけがいいのではない。大事なことは真ん中に芯が通っているかどうかなのじゃ」含蓄の深い言葉でした。売上を上げるためについあれもしてこれもしてと、商品アイテムを増やしたりして手を広げがちですが、そのお爺さんの言葉通り芯をはずして広げてはいけないのです。広げることよりまず自社の強みを何に絞り込むかということが大事であり、その答えを教えて頂けるのはお客様であり、まったく異業種の方との話の中にヒントがあるはずです。あふれる情報の中で絞り込む、芯を見つけることは情報がありすぎるからこそ一昔前より大変かもしれません。最後に前国連難民高等弁務官であった緒方貞子さんの言葉を紹介します。「リーダーの使命は決めることです。色々な人の話を聞いて、それらの話を総合的に考え、どの方法が人々の幸せにつながるかを基準にして決断します。そして最後の最後の判断基準は勘です。」
何が自社の芯なのか、何が自社の強みなのか、色々な人と話してもなかなか解らない時はエイヤーと勘できめてしまうことですね。

時代を超えて [経営]

アベノミクスの影響で株価は上がり、円は100円を超えるかどうかをうかがい、内閣支持率は高止まりしています。しかし、実体経済では円安の影響が、受注増ではなく電気代やガソリン代の値上げ、さらには仕入れ原材料の値上げとマイナスのほうから影響しだしています。そして安倍政権では、益々増え続ける社会保障費の増大を抑えるために、企業の定年延長をかがけていますが、そうなれば、インフレ率2%が達成され、景気が回復してきても、企業は非正規雇用を増やすだけで、若者の正規採用就職率は上昇しないのではないかとも言われます。そうなれば企業の活力低下は否めないでしょう。

 弊社が協力している「八百屋マン・マーケット」と言う取り組みは、発達障害や学習障害を持っていて就労困難な若者が、この移動式野菜果物販売を通じて就労訓練をしようという取り組みです。この活動をやりだして足掛け4年になりますが、多くのそういった若者はほぼ全員と言っていいほどコミュニュケーションが苦手です。人より早くは出来ませんが、誰よりもまじめで一生懸命です。ただ段取りが悪かったり、飲み込みが遅かったりするだけです。彼らはアベノミクスが実践された社会で働く場があるのでしょうか。彼らの働く場に競争原理はそぐわないような気がします。一昔前なら、人としゃべらなかっても、もくもくとラインに流れてくる部品を組み立てているだけでよかったり、親父と一緒に狭い作業場でこつこつ仕事をする場がありました。それが人件費削減のためにロボットに置き換わったり、機械に代われない部分は人件費の安い海外に移転され、挙句の果てに親父と2人でやっていた仕事すらなくなってしまいました。時代の流れで仕方が無い、生き残るためにはやむおえない、競争に勝つためにはそうしなければならないのでしょうか。その一言で済ませていいのでしょうか。彼ら、彼女らと接していると本当に幸せな日本に向かっているのかと疑問を持たざるを得ません。一昔前に戻ろうと言っているのではありません。時間はもう戻りません。いくら今円安に振れても、いったん移した海外の工場を閉めて国内に帰ってはきません。そういった若者も一緒に働ける就労の場、事業領域を新しく作り出すしかないのです。その新たな事業領域を作り出すときの判断基準は、「共に働く人たちの幸せにつながるのか、お客様が本当に必要とするもの・サービスなのか、そして世のためになるのか」です。長くダラーとしたデフレ不況に慣れてきたところに、急に株価が上がり、円安になりちょっぴり浮かれたマインドになっています。政権が変わり、時代も変わったのでしょうか、それとも時代が違うのでしょうか。時代が変わったとしても、時代を超えて変わらない企業の判断基準は歴然と存在します。人としての判断基準が。

<極> [経営]

アベノミクスの影響で、株価は上昇し、円安が進み、政府発表の3月の月例経済報告でも3ヵ月連続して好転の兆しです。昨年末の総選挙で自民党が大勝しましたが、その時注目されたのが第3極と言われた政党です。自民党か民主党かという2極ともう一つの対立軸という意味で第3極となったのでしょうが、そもそも「極(きょく)」とは「極(きわ)まり」のことですので、南極とか北極のように、1,2,3極は対立軸になければならないのに、よく似た政策で極と呼ぶのはいかがなものかと思います。

昨今、時代は2極分化とよく言われますが、その場合ある商品で言うと高級品か、低価格品かという選択肢に分けられています。それは供給側がどちらの商品を提供するかで、購買者もどちらかの層に限定されます。購買者は2名存在することになるのです。供給側も高級品を売るならそれらしい店づくりを、低価格商品でいくなら、徹底した合理的な店づくりを考えるでしょう。
しかし、もう一つ2極ほどはいかないが分化する購買行動があります。それは普段は景気が悪いから、旦那の給料が上がらないから、といった理由で安い店で買い物をしている主婦が、今日はお客様が来るからとか、子供が帰ってくるから、何とかの記念日だからとかいう理由で少し高くてもおいしいもの、チョットいいものを買うという消費行動です。その選択の時購買者は1名です。このチョットがくせもので、今まで超高級か、超安値かの二者択一からその中間にあったチョットいいもの、チョット安いものというあまり大きな差でない小さな差を考えることが存在するのです。私が関わっている「八百屋マン・マーケット」(働きにくい若者の就労訓練の場)という野菜・果物の移動販売でも、いつもの常連さんが「明日は孫が来るから」という理由で、お米やお菓子類といった普段買わないものを買って頂ける時があります。これも普段と違う消費行動です。

今まで、私達はものづくりを考える時、つい対極を考えがちですが、その間にある、チョットした差を持ったものを同時に考える事が出来たらそこは最も大きな市場なのかもしれません。そうしたチョットした差をつけた商品を両方作れるのならそれに越したことはありませんが、それが無理なら、チョット対極にある企業と手を組むことで相乗効果が生まれるかもしれません。

ライバル店が全くいないところに店を出すのも一つの方法ですが、少し違いがある同じ業種の店がすぐ近くにある方が両方繁盛すると言われる所以かもしれませんね。

<神仏を尊びて、神仏を頼らず> [経営]

昨年末、猫の目内閣が倒れ、自民党が大勝して返り咲き、安倍首相も又返り咲きました。
デフレ脱却、景気上昇を全面的に掲げて議席の過半数を大幅に超える支持を得たように見えますが、実態は消去していって残った政党が自民党というのが実態のようです。

 今年はどんな年になるのでしょう。2014年4月の消費税8%実施の前提条件として、今年は何としても景気を浮揚させなければならず、日本を取り巻く中国、韓国が共にトップが変わり、アメリカもオバマ大統領が再選された初年度にあたることを考慮に入れると、今年は昨年よりは確実に景気浮揚策が取られるでしょう。しかし、欧州危機の火種は残ったままだし、中東情勢も不安定さを増している中で、本当に日本の実体経済は浮揚するのでしょうか。年明けから株価が上がった、円安になったとマスコミでは良いことのように報道されていますが、円安になるということは輸入品のコストが上がるということで、入超になっている日本としては、プラス面よりマイナス面が多いということです。

又、2015年秋には消費税10%が待っています。こう考えていくと、今年は確実に昨年より景気動向は上向かされるでしょう。しかし、持続可能な景気対策でない限り、それは需要の先食いになり、世界的に見ても、歴史的に見ても、消費税UPの後は必ずと言っていいほど反動の景気減速が起こります。
だから、ある意味で今年は正念場の年になるかもしれません。今年何をしておくのかで、来年どう乗り切るかが決まります。
どんな年になるのかは、日本の政治や世界経済の動きに左右され、一人ひとりの力ではどうしようもないものがありますが、どんな年にしたいのかは個人、経営者次第です。

敗戦後、復興には100年かかると言われていた日本が、50年足らずで世界第2位の経済大国になったのは、「団塊の世代」(これを書いている私自身も)と言われる世代の親達がまず復興の礎を作り、その上で大量のその世代が拡大再生産のシステムを作り上げ、物質的に充足された生活を築き上げてきました。これは、世界に類を見ない勤勉で、穏やかで、教育水準が高く、中庸の精神を持った国民性だからこそなし得た到達点だと思います。しかし、ピークとなったバブル崩壊後、特にリーマンショック以降、デフレ経済に突入してなかなか抜け出せないのが実情です。それを今度の新政権が脱却を目指すと言ってくれています。ありがたいことですね。

剣豪宮本武蔵が吉岡一門との決闘に臨んで有名な「一乗寺下がり松の決闘」に行く前に、ある神社の前で唱えた言葉が今回表題にした「我、神仏を尊びて、神仏を頼らず」です。
新年多くの方が初詣に行かれたと思います。その時どのように心の中で唱えられたでしょうか。
私は昨今、お参りする時には、例えば『売上倍増して下さい』ではなく、『売上必ず倍増させますからどうぞ見ていて下さい』と唱えるようにしています。神仏の前でお願いするのではなく、誓うようにしています。政治動向や、経済環境を見きわめることは大事ですが、外部要因に頼ることなく、惑(まど)わされることなく、自らの感性を信じ、自らの進むべき道をはっきり見切り、ある時は大胆に、又ある時は小心に、それこそ二刀流を使い分けて、今年襲い来るであろう新たな波を乗り越えて、さらにその先にある荒波を超える心構え、経営構えをして行こうではありませんか。

<不況 また 良し> [経営]


 9月の景気動向調査では、6か月連続で指標が悪化しており、内閣府は景気判断を「足踏み」から「下方への局面変化」と下方修正し、「すでに景気は後退局面に入った可能性が高い」と発表した。7~9月のGDPも、年率換算で前期比3.5%の減少である。10~12月はさらに悪化するのではという予測も流れている。中国での排日運動の高まりが、輸出入に大きな影響を及ぼし、国内では安定しない政局で予算執行が遅れるといった前代未聞の事態が一層経済活動を停滞させている。

 昨年の3.11東日本大震災以降、その復興需要で少しは景気が良くなるのではと考えたことは、人の不幸で飯を食うような考え方と大いに反省です。不況は会社の危機感を鮮明にします。「不況また良し」とは松下幸之助氏の言葉です。多くの苦難を乗り越えてきた氏も、自分が創業した企業が、今のような危機的状態に陥ることは予想もしなかったかもしれません。家電王国と言われた関西も、その王達が全員苦境に陥っているのだから、その城下町の関西が厳しいのは当たり前です。

先日、弊社の社長が参加して来た講演会の報告を聞きました。「不況こそ会社を強くするチャンスと考えよ」という内容です。業績を上げる基本的な方法は、どんな時にも2つしかないというのです。社内のコミュニケーションを高め、お客様への訪問頻度を上げるという二つです。又、報告を聞いてなるほどと思ったのは、「売上は上げるものではなく、上がるもの」「利益は高めるものではなく、高まるもの」という考え方です。売上をいくら上げよ、利益をいくらにしようという数値目標も必要だと思いますが、お客さまにとって、社員にとって良いことをやる仕組みを徹底的に考えて、実践する、そして、それが習慣づくまで継続する、そういった計画を作成し、実践し、再考する、その結果が売上向上であり、利益がUPするというものです。売上、利益は行動の結果でしかありません。大事なのはそれを生み出す仕組みであり、経営者の考え方なのですね。景気が悪いということは、仕事が減っていることであり、それだけ時間が余っているはずです。忙しい時は考える時間もないとぼやいていた人が、ヒマになったらなったで、やることがないと又ぼやくのも事実です。

景気はいつの時代も循環します。ここ20年余りは、その山と谷が低くなっていますが、谷の次は必ず低いとはいえ山が来ます。一刻も早くその余った時間で、必死で次の自社の行く道を考え、その方向に向かって種をまき、次の山が来た時に備えたいものです。

<中小企業に出来る?中間技術開発> [経営]


 原発を再稼働させなければ、大停電が起こるかもしれない、火力発電所をフルパワーにすると原材料費が上がって、値上げしなければならないといった脅迫とも受け止められる政府と電力会社の発表に、国民は仕方がないから再稼働を承認したのかどうかよくわからないうちに節電の夏は終わろうとしている。予想通り猛暑日が続き、連日、熱中症にご注意をと天気予報士は訴え続け、電気のない生活なんてと考えさせられた一夏であった。

以前読んだイギリスの経済学者E.F.シューマッハが1973年に書いた「スモール イズ ビューティフル(人間中心の経済学)」は、新しい経済のあり方を考える一助として非常に示唆(しさ)に富んだ本であった。それは39年前に書かれたにもかかわらず、今まさに日本で起こっている原子力発電所の問題や、急速に経済発展をとげている新興国に起こっている都市部と内陸部での経済格差の問題等々、その当時まだまだ上昇勢いの強い時代に警鐘を鳴らし、経済や企業の基本となる目的を見直し、目標を変えるべきだと著(あらわ)している。この著書の中で、目標とすべきは、「人間の顔を持った技術(中間技術)開発と持続可能な消費生活」と書かれている。この「中間技術開発」こそ表題通り、大企業ではなく、中小企業が得意とする分野である。
 雇用を減らすための大規模技術開発ではなく、安くて誰でも手に入れられ、小さな規模で応用でき、人間の創造力を発揮させるものが中間技術とうたっている。

読んでいて具体的なイメージがわかないなと感じていた時、まさにこれだという情報がテレビから流れてきた。

この節電の夏で注文が殺到した中小企業がある。栃木県那須高原にある「非電化工房」という中小企業である。名前の通り、電気を使わない製品を作っている。
又、サッカーすればするほど蓄電されるサッカーボールがあり、乳幼児が低体温症にかかった場合、先進国では、高価な保育器に入れて幼児を守るが、低開発国ではそれに代わって寝袋の様なものに何度でも使える保温シートを入れて、乳幼児の低体温を防ぐものがある。
それらはどれも中小企業が開発したものであり、又その寝袋式保温器の優れたところは、現地の糸を使い、現地の人が作れる、すなわち新たな雇用の場が発生するのである。こういった技術・商品開発が「中間技術」と言われる具体例であろう。

伝統工業の在来技術を使い、これに先進技術の知識を加味して適当に改良を加えることで新しい商品を開発する事、これなら何となくできそうな気がしませんか?しかし、人一倍の勉強と努力入りますが・・・

<良い経営者の必要条件> [経営]

外ではユーロ圏のボヤを消しきれず、内では消費税増税法案が可決され、そのおまけで民主党の内部分裂と政争の火事が燃え広がっている。そうした渦中にあって、国内景気はもとより、復興の進捗も一向に改善されず、トップの姿勢が内外から厳しい批判にさらされている。
 
以前、景気も悪く、暇で取り合えず時間だけはあった時、色々な経営者の話を聞きに行ったり、経営者の伝記本を読んだりしていた時があった。その中で、「学ぶ」は「まねる」が変異したということを知り、とりあえず自分ができる範囲のことを、自分流にアレンジして色々やってみた。この2カ月に1度の拙文「トンボの片思い」(名称は変遷しているが)もその時から始めたもので、今まで続いていることの一つである。その後も色々な経営者の方々と接してきたが、その中には知合った時は数名の会社であったのが、10数年たった今では、社員数200名以上の企業に成長されているところもあれば、以前は相当厳しい経営環境にあったにもかかわらず、今では内容的には羨むばかりの優良企業になっている会社もある。そのような会社の経営者の方々や、今では伝説的になっている経営者の方々には、以下のように共通する点があるように思う。

①前向きで根あかであり、何事もプラス思考である。
②勉強熱心である。
③いいと思ったらすぐ行動に移す。
④好奇心が旺盛である。
⑤聞き上手である。

ここまでは、持って生まれた性格によるところも大きいから、中々まねるのは難しいかもしれない。

⑥朝の出社が早い。ほとんどの方がどの社員より早く出社する。
⑦自らがすすんで掃除をする。(特にトイレ掃除をされる方が多い)

性格に関係なく特に、この⑥、⑦が私の知る狭い範囲において、社員が活き活きと働くいい会社の尊敬すべき経営者の方々の共通する行動であり、良い経営者になる必要条件のように感じる。やり続けたからと言って必ずしもいい会社になるとは限らないが、何もやらなかったら絶対にならないのは明らかなのだから、何か一つでも実行する方が数倍いいのは間違いのないことである。

<団塊の世代を考える> [景気、経済]

先月発表された3月の日銀短観DI(良い―悪い)では、中小非製造業は12月の△14→△11と改善されたが、中小製造業のそれは△8→△10と2ポイント悪化した。さらに6月の予測では共に5ポイントの悪化を想定している。一部改善されたとはいえ、依然として水面下にいることに変わりがない。さかのぼって調べてみると、中小製造業では2007年12月の+2以来、足掛け5年に渡るマイナスである。中小非製造業に至っては、その時でさえ△12であり、相当長い期間マイナスである。

今年は、団塊の世代の第1陣が65歳を迎えてくる年であり、この3年間にこの世代が一気に65歳以上に突入する。上記のような景気低迷期において、全社一丸となって今の売上、利益確保に奔走しなければならないのは勿論だが、今後の自社の向かうべき道の方向へも種まきをしなければならないそのひとつの判断材料として、このことは見逃せないのではないだろうか。

その参考資料として、昨年総務省から発表された「家計調査年報」の中の全世帯の平均消費支出と、65歳以上の平均消費支出の比較を考察して見ると、保健医療費は当然65歳以上世帯が上回っているが、食料費では外食費は大幅に減り、魚介類、特に果物類の支出が伸びている。又住居費では、地代家賃は半分近くに減っているのに対して、修繕・維持費が大きく上回っているのを見ると、やはりリフォーム、修繕の需要が伸びるのがわかる。交通・通信費では、自動車関連費、通信費は共に約40%減じている。ということは今最も伸びているスマートフォン需要も、新しい高齢者向けコンテンツを創造しなければ急速に落ちてくる可能性がある。全世帯平均消費支出より、65歳以上のそれは、1か月約4万円弱少ない21万3217円だが、高齢化社会に突入して、単に消費の総需要は縮小するが、その細かい部門によっては、大いに伸びる消費動向があるという変化をとらえておかなければならない。

この団塊の世代が社会の中心的労働力となっていた時代は、家電メーカーが世界に向けて飛躍していた時代であった。今、その大手メーカーは価格競争の荒波の翻弄され、軒並み赤字に転落し、合併・リストラの大合唱の中にいる。大量生産・大量消費は、他のアジア諸国にシフトし、国内はますます多種多様化に拍車がかかってきている。いま65歳以上の高齢者と、これから65歳以上になって行く団塊の世代の高齢者も又、違う側面を持っているはずである。そのことも考慮して、多様化対応のシーズを探し続けなければならない。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。