<時流を読む> [経営]

毎年1月5日、弊社は新年ミーテイングと称して午前中会議を行います。各自が上半期の反省と後半の計画修正を発表するのですが、メインはトップが今起こっていること、これから起こるであろうと思う事を予測し、それに対応するには何が必要か、どんなことをしていくべきなのかを正月休みの間にじっくり考え、社員に伝えることだと考えています。

時代の流れを読み解くことなど誰もできないのはわかっていますが、それでも経営者は考えなければならないのです。流れに身を任せていれば成長する時代は終わったことだけは誰もが認める自明の理なのですから。

第2次大戦後、焼け野原になった日本が復興していく姿は、まさに「3丁目の夕日」の映画の世界でした。あれが欲しい、これもしたい、もっと働いて家族を幸せにしたい、目標が単純明快でした。それが高度成長をもたらし、1964年東京オリンピックの年にまさに花開き、先進国の仲間入りをしていきました。その後、平成の世になって「戦後は終わった」といわれ、先進国から成熟国になっていったのです。
先進国の時はまだ経済成長するのではという希望が持てましたが、成熟国になると周知のように低成長時代になりました。今更、過去のように高度経済成長は望むべくもありません。今、低開発国と言われる国々が急激な高度成長をしているのは、まさに日本の戦後の一時期を見る思いです。その時代は原材料により近い企業が収益を上げていました。過去の一時期「松下電器産業」は安売り家電量販店には商品を販売しないと言っていましたが、これはメーカー(川上)が強い時代の象徴的な言葉です。しかしその数年後、急激な販売・流通の変化の波にのまれ、今ではどこの量販店でもすべてのメーカーの電気製品が並んでいます。これは、消費者により近いところ(川下)が強くなってきた証拠です。成熟国になると、川上より川下、より消費者に近いところの企業を社会がより必要としてきたのです。

こういったことも踏まえ、弊社も原材料のみの販売から、少しでも川下に近付くために、材料に加工を施した半製品や、レーザー加工機による完成品の販売を手掛けるように舵を切りました。まだまだ道半ばにも至っていませんが、方向は正しいと思っています。

 このように、大きな方向を見定めて舵を切るか切らないかは、舵を握っている船長にしかできないのです。そしてその船には、その船を動かしている社員が一緒に乗っていて、又、その社員の家族、船長の家族まで乗っているのですからその責任は重大です。

「時流を読む」ために必要なことは2つです。一つは色々な人の話を素直な気持ちで聞くこと、そのためにそういった場に積極的に出向くことです。その中にはお客様のもとに行って「注文下さい」と言いに行くのもいいでしょうが、じっくりとトップの方のお話を聞くことも入っています。そしてもう一つは本を読むことです。どんな本を読んでいいかわからないときは、それも色んな人に「最近読んで面白かった本はなんですか」と聞けばいいのです。読み終わっていて了解が得られればその方から借りて読めばいいのです。ITを駆使すれば本の紹介の情報などはあふれかえっています。

低成長時代はライバルとの激戦の時代ともいえます。そうした荒海の中、目指すべき港は決まっています。「社員や取引先様、そして家族が幸せになる港」です。その港に向かうのに、どの方法で潮流を乗り切っていくのか、後は自分の頭で考え行動に移すのが経営者の役割です。

新規開拓 [経営]

何にもしないで、ただ相手から注文が来るのを待っているだけでは、年間5%ずつ売り上げは減少する、と言われる。高度成長時代はその逆であったが、減速経済の状況下では、ライバルに取られたり、得意先が廃業したりして減っていくのである。昨今ではそのスピードが10%という人もいる。

会社を維持させるには、それなりの利益がいる。
利益を確保するには、まず売り上げが立たなければ利益は存在しえない。

そうした状況下で売り上げを維持させる方法としては、一つに新規開拓がある。
たまたまの出会いもありヒットになる確率もあるが、その確率は低い。しかし、ゼロでないことも確かである。
だから、訳のわからないところから、電話だけの売り込みがあったりするのである。

新規開拓にも、従来の職種での新規開拓と、新しい業界への新規開拓がある。
新規事業を展開し、新しい業界に開拓販路を広げていく、それを今までの販路に拡げていく、
今までの事業を新しい業界に拡げていく、色々な切り口がある。

営業は、常に新規開拓、新規開発を頭において行動しなければならない。
そうでなければ、座して死を待つことになる。

あなたの会社の強みはなに? [経営]

消費税増税前の駆け込み需要は、以前の5%UPの時よりは感じられず、その割に4-6月の落ち込みが大きいようです。大手は予想以上に少なかったとか、想定内と言っているようですが、中小企業にとっては想定外の需要不足と、想定内の反動減でありました。

7-9月の景気動向を見て、12月に来年度の消費税10%上げをどうするか判断すると言っている安倍内閣。大型補正予算を組み、何が何でも7-9月の景気浮揚を図り、消費税を上げる方向に持っていこうとしています。5%が8%になるより、8%が10%になる方が差が少ないように感じますが、100円の物が税込みで1割上がるとなると、消費者にとっては大きな値上げに感じられます。そうなると、10%前の駆け込み需要は、その前の8%に上がる時に先食いしているので期待できず、反動減だけが大きく来るのではないかと懸念されます。
 
そうした中でも自社の強みを明確にし、その強みを生かす戦略を練り、さらにその強みを磨いて行けば激しい競争も勝ち残れると、一部の経営本には書かれているのを目にします。

あなたは「自社の強みは何ですか?」と聞かれたらどう答えますか。
「納期対応力です」「品質ではどこにも負けません」「価格は同業他社より絶対安いです」
「どこにも出来ない技術を持っています」等々。

私はどれも言えません。大阪市内だけでも同業他社が数百社ある中で、上記のどれも1番だと言える自信はありません。
それなら、お客様はなぜ当社から買って頂いているのでしょうか。こちら側から見るとライバルは数百社ですが、お客様が購入される同業他社は多分数社しかありません。その中で、選んで頂いているのは、お客様A社にとって自社は納期対応力で買って頂いているのかもしれません。又、別のB社様は、他社と比べてクレームが少ない安心な会社として、お付き合い頂いているのかもしれません。そう考えると、A社様から急な納期の注文が入った時は、何が何でも対応しなければ、そのお客様A社にとって自社から購入して頂く理由がなくなってしまうのです。

どこにもない特殊な技術を持つ事は絶対的な強みになるでしょう。そのように日々技術力を磨く事は勿論重要なことです。しかし、本当の強みはお客様が自社を選んで頂いている理由にあるのです。普遍的なもの、絶対的な技術を1つ持つより、個別的な対応力を磨いて行く方が中小企業には手っ取り早いような気がします。


生き残る企業 [経営]

大阪の河内長野の地場産業が爪楊枝製造である事をご存知でしょうか。あるというよりあったという方が正しいのかもしれない。現在爪楊枝を製造しているのは河内長野市でも1社しかない。いや、日本でもその会社がただ1社残っているのみである。その会社の名は「株式会社広栄社」。創業大正6年、現在4代目の方が継いでいる。最盛期にはこの地域で作っている爪楊枝のシェアーは国内の96%、世界でも50%以上であった。

しかし、安い中国製品に押されて、現在では広栄社1社になってしまった。その前社長稲葉修氏とその会社を訪問してお話させていただいたことがある。爪楊枝はなぜ丸いのか、それは作りやすいからだそうである。使い捨て故、安く安くを追求して形は丸く、生産は中国でとなっていった。しかし、丸いのは本来「カクテルピィック」といって、果物等を刺すためのもので、歯に用いるのは歯のすき間に合わせた三角形をしているのが正しいのであり、ヨーロッパでは当たり前のことが、日本では激烈な価格競争のため丸になってしまったようである。

広栄社では、その三角楊枝を生産し、北欧に輸出までしている。その社屋は今も木造板張りの会社で、利益を生まない建物等へは極力コストをかけないようにされている。1本1円もしない製品で何銭・何厘の競争を経験してきたからこそ無駄を省く意識が高いように感じた。その三角楊枝も丸に比べて製造コストが高くつくため、以前は三角柱の形をしていたが、歯に当たる部分だけ三角形で持つところは丸といった形に進化させ、製造コストを下げている。これ以上のコスト削減は無理と考えるのではなく、もっとコスト・経費削減はできないかと常に考えておられる結果であろう。
 
 利益は会社を維持するための必要条件である。利益を出すにはいうまでもなく、売上を上げるか、仕入れ価格を下げるか、粗利率を上げるか、そして経費を下げるかこの4つしかない。安倍政権になって、景気は回復してきたといわれる中で、それを実感できない我々中小企業では、上記の売上を伸ばすのもままならず、デフレ脱却も目指すアベノミクス効果で、仕入れ価格・経費も上昇してきては利益を出すことすら難しくなってきている。即、利益に結びつくのは固定経費削減であり、雇用を守るためにも1円でも10円でも削減に取り組まなければならない。「たったそれくらい」と考えては絶対できない。たったそれくらいでも思いついたら即実行する。やり続けることで、固定費であるので毎月確実に減り、塵も積もればである。何より社内に無駄を省こうという習慣をつけることが大事なのである。

先に書いた広栄社でも、無駄な経費は徹底して省いておられるが、地域貢献、社会貢献には積極的に関わっておられ、地元の小学校の社会科の教科書にも紹介されていて、社員が誇りを持って働いている会社になっているのである。

その行動、正義なりや [経営]

今年は例年になく穏やかな天気に恵まれたお正月からの幕開けでしたね。
昨年はアベノミクス効果で、株価は1年で50%以上上昇し、円は20%以上安くなりました。通常ならば貿易収支は黒字になるはずなのですが、ほぼ通年に渡って赤字のままに推移し、特に後半では、エネルギー価格や食料品等が高騰し、政府曰く物価指数が上昇しデフレ脱却のシナリオができたと言うことですが、一般消費者にとっては生活しにくくなっただけではないでしょうか。
「一年の計は元旦にあり」どんな一年になるのでしょう、いえ、どんな一年にしたいのでしょうか。今年は「甲午(きのえうま)」、「甲」は十干の一番目であり殻を破って出ようとする情熱を表わし、十二支の「午」も動的意味を持っていて、そこから「甲午」は激動の年になるといわれています。四月には消費税が上がり、経費や仕入れ価格も上がれば、売値も上げざるを得なくなり、そうなると昨年と同じだけの量を生産・販売しても、売上は必然的に上昇します。その反面、注意しなければならないのは粗利率が低下し、売上が上がっても粗利の額その絶対量が低下する危険性が高まることです。
 その危険性を回避する方法は、時代のせいにせず、自ら率先してまず動き、そして考え、又動く、この繰り返しをどれだけ多くできるかにかかっています。それは、激動であろうが平穏であろうが時代を超えて、中小企業の経営者には求められる資質です。「そんな資質、持ってないよ」と言う人、持ってなければ造る努力をすればよいだけです。何でもいい、小さくていい、継続してまず一つの事をやってみる、何をやるかまず決める、それが「一年の計は元旦にあり」である。
動けば壁にもぶつかり、動かなければ壁があることすらわからない。壁は時代であり、自ら今まで持っていた器である。動けば岐路に迷い、動かなければ道は見えない。岐路が多いのは、情報量の多さ故であり、深く考えている所以である。人生、壁にぶつかり、岐路に惑う、それが人間力を育ててゆくのである。私自身、岐路に立ち、迷った時、少し立ち止まり「それを行うのは正しいか正しくないか」と考えるのではなく、「それを行うのは正義なりや」と考えるようにしている。広辞苑によると「正義」とは「社会全体の幸福を保障する秩序を実現し維持すること」であり、又、「義」とは「利害を捨てて、条理に従い、人道・公共のために尽くすこと」と書かれている。「正しい」よりもう一歩踏み込んでいるのが「正義」と自分なりに定義して考えている。企業として激動の一年になろうと「正義なりや」を常に胸に刻んで、今年も進むと年頭に思う。

今、船長のなすべきことは・・・ [経営]

大手家電メーカーの中間決算が発表され,各社共大幅赤字から一転して黒字予測と大改善しました。しかし、その内容は人員整理、赤字部門閉鎖、関連会社売却といったマイナスを切る事と、円安と言う外部要因によるところが多大であったようです。次の一手が描けない中でとりあえずの緊急の止血処理だけを施した感があります。
安倍政権は10月1日、来年4月の消費税3%アップの8%を表明した後、第三の矢を放つために弓をキリリと引き絞り、凍結されていた公共事業復活、大企業の希望を入れた法人税減税を伴った矢を放とうとしています。この消費税のアップは、福祉目的税とされていますが、福祉を充実させるのではなく、このまま行くと破綻する福祉財源を補填するもので、これも言い換えると止血処理です。消費者物価指数が上昇に転じたことも、デフレ脱却の端緒とみられ、消費税アップの要因の一つとされています。しかし、実態は円安と異常気象で、食料品を含む日常品の値段が高騰しているだけです。あふれた資金が設備投資や賃金に回らず、この状態で消費税が上がると、大企業、大金持ちが優遇され、一般庶民、中小企業にとって厳しいものがあるような気がします。全企業が納得していた「復興特別税」は1年前倒しで中止にする一方で、首相自らがトルコに再度出向き原発をトップセールスする、「おもてなし」の真の心はどこへいったのか怒りさえ覚えます。
いつの時代も事業をやっていく単年度の中にも山や谷があります。特に谷はある時には外部要因も重なって深くえぐれるときもあります。山は低く、谷は深く感じるものです。
1年と言う永い航海の途中には、好天の日ばかりではなく、緊急の対策を講じなければならないときもあります。大きなうねりに飲み込まれて航路を外れそうになる時もあるでしょう。しかし、まさにその時「今、船長のなすべきことは、眼前の荒波を乗り越えることと、たどり着くべき港を見つめること」です。乗り越えてから見つめるのではなく、見つめながら乗り越えるのです。売上が急減した時、「新規開拓をもっとやれ」とハッパをかけるでしょう。しかし、たどり着くべき港を見つめてハッパをかける時は「これから、○○の業種、△△に関連するお客様を獲得することに全力をかけよ」とより具体的になるのです。
たどり着くべき港を見つめながら眼前の荒波を乗り越える努力をすることは、日常的な船長の大きな役割ですが、目的の港に着いたら、次の航海に向かっての準備をし、次の港を決めて再び帆をあげて荒海に出航しなければなりません。そう考えると、船長の最も大きな使命は、港にたどり着くことではなく、それはあくまで通過点の目標であり、真の目的は乗っている船そのものを、そして何より乗員、乗客、積荷の安全・安心を確保しつつ航海を続けることなのかもしれませんね。

芯と勘 [経営]

8月の月例経済報告で、「景気は、着実に持ち直しており、自律的回復に向けた動きもみられる。」と発表された。しかし、国内で多数を占める中小企業にとっては「アベノミクス」「日銀効果」が実感できないと言う声が多く聴かれる。「いつになったら忙しくなるんかね」「もうしばらく辛抱すると自分の所へも仕事が回ってくるかね」と時々聞かれることがある。その時はこう答えます。「いつまで待っても 以前のように大手が忙しくなって、その後我々中小企業に仕事が回ってくるということはないですよ」と。ピラミッド構造をしていた一昔前の製造業では、上から下へ仕事が回ってきたものであるが、その構造自体が消滅してしまった以上、今その期待は薄いと言わざるを得ない。大型予算が組まれたアベノミクスは、上の方で水平に動いているのです。
あるコンサルタント会社の社長さんに個人的に「世間はどうですか、どの業界が忙しくなるのですかね」とお聞きしたところ、「いつの時代もどんなに忙しい業界でも暇な会社はあり、どんな景気の悪い時代でも、業績を伸ばす企業はあるものです。」と言われました。景気のいい業界にいるかどうか、今国内景気がいいか悪いかを一喜一憂している暇があれば、お客様のところに行き、色々な人たちと出会える場に行き、話を聞き、自らの考えを振り返り深めることに時間を費やすほうが数倍ましなのです。
又、ある日、昔 林業に携わっていたお爺さんと立ち話をしてお聞きしたことです。「戦後植えた木を切る時、もう少し太くなったら縦柱が4本とれると欲の皮突っ張らしてできた柱は、将来必ずひずみが出るのじゃ。それはな、芯をはずして使っているからなのじゃ。大きくすることだけがいいのではない。大事なことは真ん中に芯が通っているかどうかなのじゃ」含蓄の深い言葉でした。売上を上げるためについあれもしてこれもしてと、商品アイテムを増やしたりして手を広げがちですが、そのお爺さんの言葉通り芯をはずして広げてはいけないのです。広げることよりまず自社の強みを何に絞り込むかということが大事であり、その答えを教えて頂けるのはお客様であり、まったく異業種の方との話の中にヒントがあるはずです。あふれる情報の中で絞り込む、芯を見つけることは情報がありすぎるからこそ一昔前より大変かもしれません。最後に前国連難民高等弁務官であった緒方貞子さんの言葉を紹介します。「リーダーの使命は決めることです。色々な人の話を聞いて、それらの話を総合的に考え、どの方法が人々の幸せにつながるかを基準にして決断します。そして最後の最後の判断基準は勘です。」
何が自社の芯なのか、何が自社の強みなのか、色々な人と話してもなかなか解らない時はエイヤーと勘できめてしまうことですね。

時代を超えて [経営]

アベノミクスの影響で株価は上がり、円は100円を超えるかどうかをうかがい、内閣支持率は高止まりしています。しかし、実体経済では円安の影響が、受注増ではなく電気代やガソリン代の値上げ、さらには仕入れ原材料の値上げとマイナスのほうから影響しだしています。そして安倍政権では、益々増え続ける社会保障費の増大を抑えるために、企業の定年延長をかがけていますが、そうなれば、インフレ率2%が達成され、景気が回復してきても、企業は非正規雇用を増やすだけで、若者の正規採用就職率は上昇しないのではないかとも言われます。そうなれば企業の活力低下は否めないでしょう。

 弊社が協力している「八百屋マン・マーケット」と言う取り組みは、発達障害や学習障害を持っていて就労困難な若者が、この移動式野菜果物販売を通じて就労訓練をしようという取り組みです。この活動をやりだして足掛け4年になりますが、多くのそういった若者はほぼ全員と言っていいほどコミュニュケーションが苦手です。人より早くは出来ませんが、誰よりもまじめで一生懸命です。ただ段取りが悪かったり、飲み込みが遅かったりするだけです。彼らはアベノミクスが実践された社会で働く場があるのでしょうか。彼らの働く場に競争原理はそぐわないような気がします。一昔前なら、人としゃべらなかっても、もくもくとラインに流れてくる部品を組み立てているだけでよかったり、親父と一緒に狭い作業場でこつこつ仕事をする場がありました。それが人件費削減のためにロボットに置き換わったり、機械に代われない部分は人件費の安い海外に移転され、挙句の果てに親父と2人でやっていた仕事すらなくなってしまいました。時代の流れで仕方が無い、生き残るためにはやむおえない、競争に勝つためにはそうしなければならないのでしょうか。その一言で済ませていいのでしょうか。彼ら、彼女らと接していると本当に幸せな日本に向かっているのかと疑問を持たざるを得ません。一昔前に戻ろうと言っているのではありません。時間はもう戻りません。いくら今円安に振れても、いったん移した海外の工場を閉めて国内に帰ってはきません。そういった若者も一緒に働ける就労の場、事業領域を新しく作り出すしかないのです。その新たな事業領域を作り出すときの判断基準は、「共に働く人たちの幸せにつながるのか、お客様が本当に必要とするもの・サービスなのか、そして世のためになるのか」です。長くダラーとしたデフレ不況に慣れてきたところに、急に株価が上がり、円安になりちょっぴり浮かれたマインドになっています。政権が変わり、時代も変わったのでしょうか、それとも時代が違うのでしょうか。時代が変わったとしても、時代を超えて変わらない企業の判断基準は歴然と存在します。人としての判断基準が。

<極> [経営]

アベノミクスの影響で、株価は上昇し、円安が進み、政府発表の3月の月例経済報告でも3ヵ月連続して好転の兆しです。昨年末の総選挙で自民党が大勝しましたが、その時注目されたのが第3極と言われた政党です。自民党か民主党かという2極ともう一つの対立軸という意味で第3極となったのでしょうが、そもそも「極(きょく)」とは「極(きわ)まり」のことですので、南極とか北極のように、1,2,3極は対立軸になければならないのに、よく似た政策で極と呼ぶのはいかがなものかと思います。

昨今、時代は2極分化とよく言われますが、その場合ある商品で言うと高級品か、低価格品かという選択肢に分けられています。それは供給側がどちらの商品を提供するかで、購買者もどちらかの層に限定されます。購買者は2名存在することになるのです。供給側も高級品を売るならそれらしい店づくりを、低価格商品でいくなら、徹底した合理的な店づくりを考えるでしょう。
しかし、もう一つ2極ほどはいかないが分化する購買行動があります。それは普段は景気が悪いから、旦那の給料が上がらないから、といった理由で安い店で買い物をしている主婦が、今日はお客様が来るからとか、子供が帰ってくるから、何とかの記念日だからとかいう理由で少し高くてもおいしいもの、チョットいいものを買うという消費行動です。その選択の時購買者は1名です。このチョットがくせもので、今まで超高級か、超安値かの二者択一からその中間にあったチョットいいもの、チョット安いものというあまり大きな差でない小さな差を考えることが存在するのです。私が関わっている「八百屋マン・マーケット」(働きにくい若者の就労訓練の場)という野菜・果物の移動販売でも、いつもの常連さんが「明日は孫が来るから」という理由で、お米やお菓子類といった普段買わないものを買って頂ける時があります。これも普段と違う消費行動です。

今まで、私達はものづくりを考える時、つい対極を考えがちですが、その間にある、チョットした差を持ったものを同時に考える事が出来たらそこは最も大きな市場なのかもしれません。そうしたチョットした差をつけた商品を両方作れるのならそれに越したことはありませんが、それが無理なら、チョット対極にある企業と手を組むことで相乗効果が生まれるかもしれません。

ライバル店が全くいないところに店を出すのも一つの方法ですが、少し違いがある同じ業種の店がすぐ近くにある方が両方繁盛すると言われる所以かもしれませんね。

<神仏を尊びて、神仏を頼らず> [経営]

昨年末、猫の目内閣が倒れ、自民党が大勝して返り咲き、安倍首相も又返り咲きました。
デフレ脱却、景気上昇を全面的に掲げて議席の過半数を大幅に超える支持を得たように見えますが、実態は消去していって残った政党が自民党というのが実態のようです。

 今年はどんな年になるのでしょう。2014年4月の消費税8%実施の前提条件として、今年は何としても景気を浮揚させなければならず、日本を取り巻く中国、韓国が共にトップが変わり、アメリカもオバマ大統領が再選された初年度にあたることを考慮に入れると、今年は昨年よりは確実に景気浮揚策が取られるでしょう。しかし、欧州危機の火種は残ったままだし、中東情勢も不安定さを増している中で、本当に日本の実体経済は浮揚するのでしょうか。年明けから株価が上がった、円安になったとマスコミでは良いことのように報道されていますが、円安になるということは輸入品のコストが上がるということで、入超になっている日本としては、プラス面よりマイナス面が多いということです。

又、2015年秋には消費税10%が待っています。こう考えていくと、今年は確実に昨年より景気動向は上向かされるでしょう。しかし、持続可能な景気対策でない限り、それは需要の先食いになり、世界的に見ても、歴史的に見ても、消費税UPの後は必ずと言っていいほど反動の景気減速が起こります。
だから、ある意味で今年は正念場の年になるかもしれません。今年何をしておくのかで、来年どう乗り切るかが決まります。
どんな年になるのかは、日本の政治や世界経済の動きに左右され、一人ひとりの力ではどうしようもないものがありますが、どんな年にしたいのかは個人、経営者次第です。

敗戦後、復興には100年かかると言われていた日本が、50年足らずで世界第2位の経済大国になったのは、「団塊の世代」(これを書いている私自身も)と言われる世代の親達がまず復興の礎を作り、その上で大量のその世代が拡大再生産のシステムを作り上げ、物質的に充足された生活を築き上げてきました。これは、世界に類を見ない勤勉で、穏やかで、教育水準が高く、中庸の精神を持った国民性だからこそなし得た到達点だと思います。しかし、ピークとなったバブル崩壊後、特にリーマンショック以降、デフレ経済に突入してなかなか抜け出せないのが実情です。それを今度の新政権が脱却を目指すと言ってくれています。ありがたいことですね。

剣豪宮本武蔵が吉岡一門との決闘に臨んで有名な「一乗寺下がり松の決闘」に行く前に、ある神社の前で唱えた言葉が今回表題にした「我、神仏を尊びて、神仏を頼らず」です。
新年多くの方が初詣に行かれたと思います。その時どのように心の中で唱えられたでしょうか。
私は昨今、お参りする時には、例えば『売上倍増して下さい』ではなく、『売上必ず倍増させますからどうぞ見ていて下さい』と唱えるようにしています。神仏の前でお願いするのではなく、誓うようにしています。政治動向や、経済環境を見きわめることは大事ですが、外部要因に頼ることなく、惑(まど)わされることなく、自らの感性を信じ、自らの進むべき道をはっきり見切り、ある時は大胆に、又ある時は小心に、それこそ二刀流を使い分けて、今年襲い来るであろう新たな波を乗り越えて、さらにその先にある荒波を超える心構え、経営構えをして行こうではありませんか。

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