宇崎弘文氏を偲ぶ [エッセイ]

内閣府が発表した7~9月のGDP速報値は、事前の予測では年率換算でプラス2%位と考えられていましたが、発表数値はマイナス1.6%でした。これは前期比(4~6月)ですので、前期が消費税駆け込み需要反動減マイナス1.9%であった事を考えると、大きなマイナスと言えるでしょう。数値は比較する対象、基準となる数値によって大きくぶれたりするので、その点を考慮して考えなければいけないのです。

円安誘導したから、輸出企業の業績が伸び、国内設備投資が増え、社員の給料も上がり、消費が増えるという政府のシナリオは崩れ去りました。確かに大手輸出関連企業の業績は過去最高を記録しましたが、生まれた資金は国内ではなく、海外の設備投資に回され、給与アップの恩恵も円安や天候不順による原材料高、消費財の値上がりで実質賃金がマイナスになって消費が冷え込みました。戦後スキームからの脱却と声高に言っていても、輸出が国内景気を牽引するという考えから脱却できていないようです。

9月18日、一人の経済学者が亡くなりました。その人の名は宇沢弘文。大学では数学を学んだのですが、戦後の荒廃した日本を見て、又、河上肇の「貧乏物語」に触発され、経済学に転向したといわれる経歴の持ち主です。若くしてアメリカの大学に招聘(しょうへい)されて教鞭をとっていましたが、ベトナム戦争で軍需産業が殺戮率(さつりくりつ)を数値化して、効率を追求する姿に嫌気をさし、日本に帰国しました。その後、自動車のコストには、製造原価だけでなく、その後に発生する自動車専用道路の建設費や、排気ガスによる健康被害費用等、自動車を購入しない一般国民まで負担されているその費用も加味すべきという理論を展開し注目されました。

効率化のみを追求し、経済活動は市場原理にゆだねると最適化するというアメリカの新自由主義経済に反発し、空気や水、インフラ、環境、教育、福祉等は市場原理に委ねてはいけないと唱え、ノーベル経済学賞に最も近い人物と言われて続けてきた人なのです。

企業経営も、会社の為、お客様の為にがむしゃらに働いた利益至上主義の時代から、東日本大震災を一つの契機にして、何のために働くのか、会社の存在理由は、といった哲学的命題を問われる時代に入り、地域と共に、お客様と共に、そして社員と共にその取り巻く社会をよくする企業活動の時代に入ってきたように思います。利益を生み出すことは会社を存続させる手段であり、決して目的ではないのです。無駄を省き、一生懸命働き、お客様から適正な販売価格で頂く利益は、経営者を含めて社員の幸福実現のためには必要不可欠なものです。

人間、一生懸命働く姿は美しいのです。

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